近所のおばあさんが事務所の前を通る時、毎日手を振ってくれる。
手を振り返すうちにすっかりそれが私たちの日課になった。
開所して2年、利用者さんのほとんどは緑区にお住いの方で、働く看護師たちもほとんどが近隣に住んでいる。
何かあればすぐに顔を見に行けるし、ご家族とも密に連絡を取り合うことができる。
中山に事務所を置いて、求人もほとんど地元から。訪問先も緑区のご家庭ばかりという環境が自然と整った。
訪問看護師という仕事において、「職住近接」にはかなりのメリットがある。
急な呼び出しでも、近ければすぐに対応することができる。
この間も子どもの習い事に付き添っていた夕方、利用者さんから連絡が入ったので、習い事終わりに子どもを連れて訪問に伺ったスタッフがいた。久しぶりにお爺さんという存在に触れ、子どもたちも大喜び。利用者さんも「また連れてきてね」と楽しみに待つようになったという。
利用者さんも看護師も同じ地域の住人という意味で、不思議な連帯感と、協力関係が生まれているような気もする。
距離が近いことで信頼関係はもちろんだが、お互いに気持ちの余裕が生まれ、丁度よいペースが構築できるようだ。私たち看護師も、横浜市で比較的高齢化率の高いここ緑区で、自分たちが仕事を頑張ることが、将来安心して暮らせる「地域」を作る一端を担っているという自覚が生まれ、それがやりがいや責任感に繋がっている。
最近では「仕事とプライベートをしっかり分ける」という風潮が先行し、若い看護師さんを中心にそういう思いを持っている人も少なくないと聞く。
私の感覚では、この仕事は、たった週1回の訪問であったとしても、利用者さんの大切な人生の一端にすでにかかわっている。それを自覚したところから始まるといってもいい。誰かの人生の大切な1ページにかかわることは、簡単なことではないけれど、その分、得るものもとても大きい。やりがいとか、達成感という言葉では言い表せないほど、特別なものだ。
こういう仕事をしていく時、「近さ」というものは私たち看護師の味方となってくれる。
子育てをし、自分の人生を充足させながら、誰かの人生の一端を支えるこの仕事を存分に楽しんでもらいたいと思う。それを応援し、支えていくことが経営者となった私の責任であり、やりがいだ。利用者さんの「安心」にも通ずるこの「職住近接」をこれからも推進していきたい。